の首都圏つながりコラム

第1回 今の福島を見に行くモニターツアー レポート

2012年4月9日

第1回 今の福島を見に行くモニターツアーのレポートをお届けします。
 
 

「百聞は一見に如かず」と言います。
 
震災・原発事故後、福島県は何かとクローズアップされる機会が増えましたが、
必ずしも現状が適切に伝えられていることばかりではありませんでした。
 
そこで、他県の方々に、現在の福島の姿や様々な取り組みを実際に見ていただき理解していただだくこと、そして、現地で感じたことなどご意見をいただくことで、福島県農林水産業の再生に向けた
今後の情報発信の参考にすることを目的に、『今の福島を見に行くモニターツアー』が開催されました。
 
定員30名のところ、募集開始とともに、あっという間に参加申込みが埋まり、
東京出発にもかかわらず遠くは滋賀県からの参加者の方もいらっしゃるほどの注目度となりました。

一行がまず到着したのは、いわき市観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」。
いわき市小名浜にある「いわきのいいものぜんぶある。」をキャッチフレーズにした観光拠点で、
津波で大きな被害を受けるという試練を受けながら、昨年11月25日にリニューアルオープンしたばかりの施設です。

まずは、福島県農林水産部農産物流通課 吉田肇課長より、福島県農林水産業の復興の現状について説明がありました。
津波による農地への被害や、原発事故の影響について、
また海産物について操業を休止している厳しい状況についての説明を聞く参加者の顔は、真剣そのもの。
その後、福島県の放射性物質モニタリング検査について説明があり、
出荷制限・摂取制限も含めて、出てきた数字を正直にはっきりと情報公開していること、
そして今後検査体制を更に整え、どこよりも検査してはっきりと情報を開示する旨を参加者にお伝えしました。
 
最後に、福島県は消費者の方々と接点をつくりたいと考えていること、
見て感じたことを周りの方にお伝えていていただきたいことを述べました。
この点は、私も福島県の農業者として強く願うところです。

続いて、「いわき・ら・ら・ミュウ」の大平参事より、施設について説明がありました。
まず、小名浜地域がどのようなところであるか、震災からどのように復興しつつあるか、DVDが上映されました。
地震や津波の被害の現状が映し出されると、目頭を押さえられる参加者の方もいらっしゃいました。

「いわき・ら・ら・ミュウ」は津波により1階部分が壊滅し、営業不能状態に陥りました。
そんな中、多くのボランティアの方々の懸命の修復作業や、応援してくださる企業さんからの資材調達により、259日ぶりに再オープンすることができたそうです。
そして、ほとんどのテナントが再度出店したいと意欲を示してくれたことが、本当に心強かったとも。
そう語る大平さんの口調からは、多くの応援してくださった方々への感謝の気持ちが溢れていました。

現在、新鮮な魚介類は、いわき市中央卸売市場から県外各地のものを仕入れているとのこと。
大平さんは、小名浜漁港において一刻も早く通常操業が再開し、水揚げされたものを皆さんに提供したいと思う一方、
魚介類の安全性が確保されていなければならないという複雑な気持ちがあるということを、
包み隠さず参加者にお伝えしていました。
この現場の苦悩は、直接現地でないと伝わりにくいことで、参加者の方々の心に響いたのではないでしょうか。
 
そんな中でも、周辺地域の再開発が始まり充実していくことを話され、
再度、生まれ変わった小名浜に訪れていただきたいとお話される姿からは、
復興への強い決意が感じられました。

今回の昼食は、「いわき・ら・ら・ミュウ」内のレストラン。
「いわき・ら・ら・ミュウ」で提供される魚介類が、小名浜港からのものであふれる日が再び訪れることを、願わずにはいられません。

 
 
続いて訪れたのは、いわき市の検査施設があるJAいわき市夏井支店。
消費者の方々が、食品の放射性物質検査の現場を見ることができる機会は殆ど無いので、
バスの中でも検査についてどうなっているのか、興味の声が聞こえてきました。

まずは、いわき市農林水産部農政水産課の鈴木氏より、いわき市の農林水産関連の取り組みについて説明がありました。
原発事故後の農林水産物の出荷制限や風評被害による販売価格の下落に立ち向かうため、
昨年4月から『がんばっぺ!いわき』オールいわきキャラバンと銘打った、いわき農林水産物PR事業を、いわき市内はもとより全国各地に展開していることが説明されました。

また昨年10月からは、いわきの農作物の透明性を更に高めることを目的とした、
「いわき農作物見える化プロジェクト」が始動しました。
いわき市では、県が行う放射性物質モニタリング検査の他に、独自に農産物安全確認モニタリング検査を行っており、二重チェック体制になっています。
このプロジェクトにおいて、その検査結果や関連情報を公開・検索するサイトを設けるとともに、
「見せます!いわき農家」「見せます!いわき菜園」など、農家の想いや様々な取り組みを
分かりやすく伝えるコンテンツも備えました。
鈴木氏は、いわき市では単に安心・安全を訴えるだけではなく、
上記のような様々な情報を提供することで、
消費者の方々に判断していただける環境づくりを進めていることを強調されました。
 
 
引き続き、建物内の農作物検査室で行われている放射性物質モニタリング検査の様子を見学しました。
担当の方の説明では、JA経由の出荷物と直売所に出される生産物を、生産者・圃場ごとに検査しているとのこと。
室内では、白衣を着た職員の方が黙々と野菜を細かく切り刻み、専用の容器に押し詰めていました。
検体を細かく切り刻むことにより検査容器の隙間をなくし、正確な数値が出るようにする必要があるからです。

切るのに使用するカッターナイフや皿、テーブルに敷いてある新聞紙などはすべて使い捨てで、
他の検体に影響を与えないよう配慮されていました。
フードプロセッサー等ではなく手作業で行っているのはそういう意味があるのです。

専用容器に詰められた検体は、重さを計りデータを入力後、
NaIシンチレーションスペクトロメータという放射性物質検出装置で、
ヨウ素131、セシウム134・137が含まれているか検査されます。
 
1検体10分で、検体1キログラム当たり20ベクレルを検出可能な最小の量として検査することができるとのこと。
ただ、4月1日から食品に含まれる放射性物質の基準値が厳格化されるに伴い、
検査時間を30分に伸ばし、より精密に検査する必要があるため、
現在1日40件ほどの検査数が、12~13件に減少してしまうそうです。
 
基準が厳しくなれば検査数を減らさざるを得ないというジレンマは、現場で話を聞かないと実感しにくいことかもしれません。
そのため、今後は機器と人員を増やすことによって、より充実した検査体制を整える事が説明されました。

実際に検査現場を見ることができたということは、参加者の方々にとっても大きな意味があったようです。
お話を伺うと、実際に見て話を聞くことによりしっかりと検査されていることが理解できて安心したとの声がある一方、現在のやり方では効率が悪すぎるし、もっと改善の余地があるのではないかという厳しい意見もありました。
 
多くの方に見ていただき、現状を理解していただきながらご意見をいただくというのは、
消費者の方々と福島県の農林水産物の接点をより明確にするという意味で、
非常に効果的であるということが実感できる機会となりました。

見せます!いわき情報局  http://misemasu-iwaki.jp/
 
 

以前、私の記事で取り上げさせていただいた「道の駅 よつくら港」。 (そのときの記事はコチラ
「今の福島を見に行くモニターツアー」の3番目の訪問地です。
「道の駅 よつくら港」は、津波の被害を受けた「交流館」が7月にリニューアルするまでの期間、
1月27日より駐車場に大型テントを設置しての仮営業を行っています。

1月27~29日に開催された「仮店舗オープン よかっぺ市」では、
出展者の威勢の良い声が鳴り響き、大勢の人で賑わいました。


よかっぺ市にて

まず大型テント内に入った我々の眼前に広がるのは、不死鳥が描かれた「がんばれ 東日本」の巨大な寄せ書き。
見ているだけで、みなさんの応援の気持ちが伝わるものでした。

まずは、白土駅長より震災・原発事故後の状況についてお話がありました。
津波により多大な損害を受けたこと、津波に追われ九死に一生を得たこと、
津波被災地から回収した写真やアルバム・位牌など、所有者が思い出の品を取りにこれるよう展示してあること、
震災・原発事故の影響で故郷に帰れない方がいること、いまだ震災の傷が癒えない方がいること。
あまりに現実離れした“現実”にみなさん息をのんでいらっしゃいました。
 
私も身を切られるような思いにかられながら、最初にお話を伺った時のことを思い出しました。
この気持ちは、実際に体験された方のお話でなければ、体感できないものでしょう。

そんな中でも白土駅長は、この一年は勉強になったとおっしゃいました。
物の大切さが身に染みて理解でき、全国の皆さんの支援を受け、地元の生産者の方々に支えられ、
一人ではないことが良く分かったとお話になりました。
 
販売品についての正確な情報をお客様に伝え、それをもとに判断していただくのはもちろんと白土駅長。そして“福島も日本”であることをご理解いただき、この四倉地域の恵みに感謝して、皆さんにおすそ分けしていきたいとも。
話を聞き終わった参加者の皆さんから大きな拍手が沸き起こりました。

その後、店内の新鮮な農産物や特産品をご覧になった参加者の皆さん。
「いっぱい買いたいけど、重くて持ちきれない」とうれしい悲鳴が。大いに喜んでいただけたようです。

また、店内を回られたのち、
外の海や被災して積みあげられた船舶の様子、
土台だけになった家などを見に行かれた方もいらっしゃいました。
実際に被災の現状を見て感じるということも、とても大事なことだと思います。

出発間際、白土駅長と改めてお話をすると、
「リニューアル後のレイアウト選定で大わらわです。」と笑っていらっしゃいました。
ありのままを見て伝えていただければ、と白土駅長。
生まれ変わった「道の駅 よつくら港」に、話を聞きつけた大勢のお客様がいらっしゃる、
そんなシーンが思い浮かびました。
 
 

「今の福島を見に行くモニターツアー」もついに最後の訪問地となりました。
 
訪れたのは「とまとランドいわき」。生食用のトマトの生産をメインに、
生鮮のイチジクやパプリカ、それらの加工品などを手掛けていらっしゃいます。

出迎えてくださったのは、専務取締役の元木氏。
昨年11月に開催された、「福島の農業の未来を語るシンポジウム」ではパネリストとして参加してくださいました。
 
まず会社の経営概要について説明があった後、震災の影響をお話になった元木さん。
地震により暖房施設や施肥施設が深刻なダメージを被り、生産の継続が困難になったそうです。
 
それに追い打ちをかけたのが原発事故。

東京電力福島第一原発から約34㎞の地点に会社があり、一時は避難されたそうですが、
避難区域外ということで不安ながらも戻らざるを得ず、施設の復旧を行いとりあえず再稼働されたそうです。
 
とはいえ、34名の従業員のうち当初から出勤できたのは4・5名。
仮設住宅から通っていた社員もいたと、当時の厳しい状況を振り返られました。

しかし、そこで立ち止まるわけにはいかないと手を打ちます。
 
県のモニタリング検査が始まるよりも早い昨年3月25日には、九州の業者さんを見つけ放射性物質検査を行ったそうです。
その後も、国の基準よりも厳しい独自基準を設け、もし超えるようなことがあれば全ての出荷を取りやめる覚悟で生産を継続。
当初は風評被害で受け入れてもらえなかったそうですが、その取り組みと苦境がメディアに取り上げられたことをきっかけに、
多くの個人の方がネット通販で応援してくださり、徐々に経営が軌道に乗ったそうです。
真摯な態度で取り組む「とまとランドいわき」の経営姿勢に、参加者の皆さんは感心していらっしゃるようでした。

続いて実際に栽培がおこなわれている、ガラスハウスに向かいました。
 
「とまとランドいわき」の栽培方法は養液栽培。土を使用せずヤシの実を利用した培地を使用し、
温度・湿度・光・栄養そしてCO2の濃度までコンピュータ管理されています。
 
整然と並ぶ数えきれないほどのトマトの樹。
みなさん見たこともないその景色に圧倒されていたようでした。

そしていよいよトマトの収穫体験。
もぎたての中玉トマトと赤・黄2種類のミニトマトをほおばり、お土産用の袋に詰めていきます。
 
皆さんの顔はうれしさで輝き、あちこちから「おいしい!」「楽しいね!」という声が聞こえてきました。
それはそうです、このようなトマトの収穫体験などそう簡単にできるものではないのですから。

「黄色いのが特に美味しいです」と元木さんがおっしゃいました。
それではと、しばらくしてから見に行くと、完熟しているものが見当たらない・・・
皆さん我先にと試食・袋詰めしていらっしゃったのですね。
たくさんのトマトをお土産にみなさんご満悦でした。
 
参加者の皆さんの口からは、実際に来て良かった、漠然と理解していたことが良く分かったなどの感想をいただきました。
皆さんには訪問した各施設や福島県の取り組みについてどう思われたかのアンケートも記入していただきました。
もちろん、厳しいご意見もありました。
ありのままのご意見だからこそ、福島県の農林水産業の復興に活かしていくことができます。
 
現地にお越しいただき、様々なことを見て・聞いて・体験していただく、
福島県では今後もこのような事業を継続していきます。
みなさんも、どうか「福島の今」を見にいらしてください。


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