おいしい ふくしま物語

あづましずく

2016年9月6日

福島には、8月上旬に食べることができる極早生(ごくわせ)品種として食味が極めて優れていることから、期待されているブドウがあります。
 
それは、福島県オリジナルの品種“あづましずく”です。
プロの間でも賞賛を得ており、果樹王国福島の新たなるエースとして期待されています。

この“あづましずく”ですが、一朝一夕でこのような評価を得られたわけではありません。オリジナルの品種を生み出し、世の中にデビューさせるだけでも大変な労力と月日が必要で、しかも継続的に市場に流通するということは非常に難しいことです。
今回は“あづましずく”が生まれた場所「福島県農業総合センター 果樹研究所」を訪ね、岡田 初彦 主任研究員に話を聞きました。

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本日より2回に渡ってお届けします。
その1 育種は百年の計                       (2016年9月6日公開)
その2 すべては1本の樹からはじまった                (2016年9月7日公開)

育種は百年の計

まず果樹研究所ではどのようなことが行われているのかを聞きました。
 
「この果樹研究所は栽培科と病害虫科と大きく二つの科に分かれています。そのうちの栽培科は栽培担当と育種担当に分かれており、栽培担当では主要果樹の生育特性の把握や的確な栽培管理技術の確立、省力・低コスト・高い生産性技術の開発などが行われています。そして育種担当において福島県オリジナル新品種の開発が行われるわけです。いずれにせよ“良いものをつくるためには”という考え方のもとにみな動いています。」
 
栽培や新品種の研究をはじめとして、実際に現場で活用される技術の開発が行われているのですね。

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「この研究所での育種は、組織培養や生長点の分裂などの技術を活用することはありますが、いわゆるバイオテクノロジーで育種するというよりは、圃場レベルでやる交雑育種、つまり花粉を取ってきて受粉させ採種し、その種をまいてできた果実を評価し、それを繰り返す……そういった非常にオーソドックスな育種が中心となっています。」
 
ということは、果樹は年に一回の収穫で果実がなるまで樹が生育するのに数年かかるので、それだけでも相当の年月が必要になります。さらに、
「新品種を育成する上では、生産者や青果流通関係者・有識者などから意見をもらい育種目標を立てるのですが、10年くらいは同じ目標で大変スパンが長いです。その期間中に育種目標に合致せずに消えていく系統があったり、せっかく品種化にたどり着いても時が経ったことで当初の育種目標自体が時代のニーズに合わなくなってしまい、なかなか日の目を見ないこともあります。

さらには担当者も、育種期間中に異動などにより育種試験から離れざるを得なくなり、品種化されたのは退職後だったりする例もよくあります。
農林水産省の育種を担当する部署に“育種は百年の計”という標語があったのですが、まさにその通りですね。」
 
と、岡田さん。これほどまでに長い期間と様々な試行錯誤が行われていることに驚きました。しかし、それだからこそ携わった品種が登録され、世に出たときの喜びもひとしおなのだそうです。

「それはもうオリンピックでメダルを取ったようですよね。もちろん世に出てからも様々な問題があるので、品種になってからもプレッシャーはあるのですが、自らが送り出した品種には親心さえ感じます。」
 
では、“様々な問題”とはどういうことなのかその点について聞くと、

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「試作農家というのですけれども、先進的な農家さんにお願いして試作してもらい、研究所と現場の違いを他の果樹農家さんも交え検討します。そしていざ商品として出すとなれば苗木業者さんにその供給をお願いし、農林事務所やJAさんなど現場の機関にも協力を頂き普及に努めなければなりません。そのように付随する事柄が色々とあるのです。」
 
これほどまでの過程を経て皆さんの元へ送り出される品種たちは、まさにエリートの中のエリート。そういったことを思いながら口にすると、より味わい深く感じられるかもしれません。
 
 
次回、すべては1本の樹からはじまった は9月7日にお届けいたします。

(記事:コッシー情報員)


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