野菜ソムリエ 藤田が行く!

困難な状況下にある福島県の農林水産業ですが、震災から一年が過ぎ少しずつ希望の光が見えてきました。
復興への道しるべとしてその光の輝きを増すべく、様々な方にお会いして復興へのヒントを頂きたいと思います。
「福島の農業者」の視点でお話をお聞きし、皆さんに届けます。

第一回目として、農水産物という食材を調理してお客様に提供する「料理人」の視点をクローズアップします。
お話をお聞きしたのはキハチ レストラン部門総料理長の鈴木 眞雄(まさお)さんです。


(動画:24分)

 

食材に対するこだわり

鈴木さんは福島県郡山市のご出身で、郡山フロンティア大使もつとめていらっしゃいます。
レストラン「キハチ」と言えば多くの方がご存知の有名店。まずは使用する食材に対するこだわりについて伺いました。

創業当時から「安心・安全」というものを重視し、
お客様が口にすることによって元気になるような料理を提供することを目指して来たとおっしゃいました。
素材となる農水産物についても、味はもちろんのこと実際に足を運び農家の話を聞くことも多く、
そこからまた違う方を紹介してもらうことも。
そして、その食材を提供してくれた農家さんを招待し、
料理を食べてもらうことによってコミュニケーションを深めるそうです。
このように人と人とのつながりも大変重視していらっしゃるようでした。

 

福島県の食材について

その上で福島県の食材について伺いました。

震災以前は、福島県と提携して福島県の旬の食材を使用したフェア等を開催していたということ。
残念ながら震災原発事故後は、国の基準がなかなか定まらなかったなど
お客様のご理解を得るのが難しい時期が続いているそうですが、
福島県の方が直接持ち込んだ食材で調理を行い、
それを関係者の方々に提供するといったことは今でも行っているそうです。

福島県は海・山の物に恵まれており、
フルーツもほとんどの物が収穫できるという良い風土を持っており野菜なども本当に美味しい、
紹介してもらった相馬の魚なども本当に素晴らしい品質で今でも使いたいと思うときがある、
と現在の水揚げできない現状を残念がっていらっしゃいました。
そんな中でも、思わぬ所で良い食材に出会った経験から、
福島の食材というものをもう一度見直すと良い食材がまだまだあるのではともおっしゃいました。

その流れでご指摘があったのは、
福島県は良いものがありすぎて突出した特産品が出にくいというジレンマを抱えているので、
地域ごとに「これだ!」という提案の仕方をするともっと認知度が上がるのではということです。
これは福島県の農林水産業の長年の課題であり、
こういった時期だからこそ鈴木さんのような県外からの視点を持つプロフェッショナルの力を借りて、
しっかり見直す必要があると再認識しました。

 

被災地に赴いて

鈴木さんは震災後、被災された方々のために炊き出しを行っていらっしゃったということで、
そのことについて伺いました。

避難せざるを得ないという大変な状態にある中、
提供した食事を笑顔で食べている姿に逆に元気をもらったと、鈴木さん。
そして、津波で大きな被害を被った地域で炊き出しをした際、被災された方々が自分の分ではなく、
まず体な不自由な方やお年寄りの方の分を配らして欲しいと提案があったとき大きな衝撃を受けたそうです。
そういった気持ちで受け取って下さることを知り、
とにかく美味しく美味しくと気持ちを込めて一個一個よそったとおっしゃいました。
困難にある中でも整然と規律を保ち、まずは人に対する気遣いを行う被災された方々の姿を見て、
人のあたたかさをもらったとお話された時、目に涙が光っていらっしゃいました。

 

「食」に対する意識の変化

原発事故前とその後において「食」に対する意識がどのように変化したかということも伺いました。

お話があったのは、安心・安全の基準についての認識が変わったということでした。
原発事故以前は、有機栽培や無農薬といった基準に重きを置いていたそうですが、
国の基準というものがどういったものであるのかという点について深く考えるようになったそうです。
その上で、生産者とそれを調理する側が隠し立てなく情報交換し、
安心・安全をお客様にお届けするという認識はさらに深まったとおっしゃいました。
そういったことを踏まえて、今後の福島県農水産物に求められている点についてもお話を伺いました。

鈴木さんが示されたのは情報の発信についてでした。
国・自治体・生産者それぞれが共通の認識のもとに情報発信することが出来ず情報が乱立すれば、
食べていただくお客様が何を持って安全なのか明確にすることが出来ないこと、
また、鈴木さんのように料理等を提供する側もお客様に説明することが困難になることをご指摘され、
情報の一本化の重要性をお話になられました。

 

ともに考え、ともに歩む

最後に、鈴木さんの視点から見て福島県の農水産物は復興に向かっていけるかと伺いました。

「いけるじゃなくて、いかなきゃいけないでしょう」、力強い言葉が返ってきました。
そのためにも、しっかりとした場で話し合いが行われ、
関係する皆が理解した中で情報発信をしていくことが大事ではとおっしゃいました。

鈴木さんがお会いした福島県の本当に美味しいと思える食材を生産する方の中には、
もう辞めようと思っていらっしゃる方もいるそうで、
そういった方々が悩んでいるということは残念で寂しいとおっしゃいました。
しかしだからこそ、何らかの形で応援し、どうすればいいか一緒に考えていきたいと心強いお言葉を頂きました。

「ともに考え、ともに歩もう」そう言って頂いた気がします。
福島県の農林水産物の復興に向けての第一歩を踏み出そうと思える、そういうお話を頂けた対談となりました。


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